銀行の手続き

これまでは、遺産分割前に一部の相続人による被相続人名義の口座から預金の払戻しは原則認められていませんでした。遺産分割前に払戻しを受けるには、家庭裁判所の判断を経る必要があり、直近の生活費を必要とする配偶者には、時間がかかり現実的な制度とは言えませんでした。 また、葬儀費用に限定して銀行の判断による便宜払いは行われていたものの、相続人全員の同意を求められるため、手続きには不便を感じることの多いものでした。

しかし、平成30年の相続法の改正により、家庭裁判所の判断を経ずに、ある一定の額までの払戻しを受けることができるようになりました。

上記の新制度を含めて、銀行預貯金の払戻しの手続きにいては、次の3つのパターンがあります。

1.遺産分割前の払戻し

相続開始時の預貯残高の3分の1に払戻しを請求する相続人の法定相続分を乗じた額について、各相続人は払戻しの請求をすることができます。ただし、1金融機関につき150万円までの制限があります。

(相続開始時の預金残高)× 1/3 × (払戻しをする相続人の法定相続分)

使用目的の制限は設けられていません。残りの金額は、遺産分割協議で決定した相続分と合わせて精算することになります。始まったばかりの制度ですので、必要書類については手続き先の銀行に確認するとよいでしょう。

【必要書類】

・払戻請求書
・被相続人の出生から死亡までの連続した全ての戸籍謄本
・請求する相続人の現在の戸籍謄本
・請求する相続人の印鑑証明書(発効後3か月以内のもの)
・預金通帳、証書、キャッシュカード
*戸籍は法定相続情報証明で代用できます。 

2.遺産分割後の払戻し・名義変更

払戻請求書に遺産分割協議書を添付して請求するものです。相続人全員の合意が形成されているので紛争の心配がなく銀行もリスクをとる必要がないので、円滑に手続きが進みます。遺産分割協議書の相続分に従って各相続人の指定銀行口座に振り込みをしてくれることもありますが、銀行によって異なります。必要書類と併せて振り込み方法を事前に確認するとよいでしょう。

【必要書類】

・払戻請求書
・遺産分割協議書
・被相続人の出生から死亡までの連続した全ての戸籍謄本
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書(発効後3か月以内のもの)
・預金通帳、証書、キャッシュカード
・相続放棄等がある場合、それが確認できる書類
*戸籍は法定相続情報証明で代用できます。 

3.遺言による払戻し・名義変更

遺言がある場合には遺言書を添付し、その内容に基づいて払戻請求をします。予め遺言書の検認の必要性、遺言執行者の有無やいない場合の家裁による選任の必要性等々の請求に付随した確認作業が必要となります。遺言書の内容によって提出する戸籍の範囲が異なりますので、事前に銀行に確認することが必要です。 

【必要書類】

・払戻請求書
・遺言書
・検認済証明書(公正証書遺言は不要)
・被相続人の死亡の確認できる戸籍謄本
・相続人の現在の戸籍謄本
・印鑑登録証明書(発効後3か月以内のもの)
・預金通帳、証書、キャッシュカード
・相続放棄等がある場合、それが確認できる書類
*戸籍は法定相続情報証明で代用できます。

以上が銀行の相続手続きの一般的な内容です。
銀行は一つひとつの書類について厳格に手続きを進めるため、それなりの時間と労力がかかります。普段仕事で忙しい方が手続きをするには大きな負担となるのではないでしょうか。

弊所では、お客様に代わり安心確実に銀行の相続手続きを代行いたします。お困りの際には、お気軽にご相談ください。