注意が必要な相続人がいる場合

前婚の子がいる

親が離婚しても親子関係は消滅するわけではないので、廃除や欠格等に該当しない限り前婚の子は相続人となります。法定相続分も他の子と同様の割合が適用されます。

相続人となる前婚の子がいる場合、故人の家族が前婚の子を認識しているケースはありますが、普段から面識があったり所在が分かっているケースはそれほど多くなく、いざ相続となると連絡を取り故人が亡くなった事実を知らせるところから始めなければなりません。

また、法定相続人となるので、遺産分割協議に参加する必要があり、交流のない相続人が含まれている協議では不安がつきものです。連絡から協議終了まで細かな配慮が必要なケースです。

兄弟姉妹の相続で腹違いの兄弟姉妹がいる

兄弟姉妹の誰かが亡くなり兄弟姉妹の相続となる場面で、腹違いの兄弟姉妹の相続人がいるときには、全血の兄弟姉妹(両親が同じ)に対して、腹違いの兄弟姉妹は半血の兄弟姉妹となり、法定相続分は全血の兄弟姉妹の1/2となります。

上の例「前婚の子がいる」の親が亡くなり子が相続人となったケースでは、子の法定相続分は同じですが、兄弟姉妹の誰かが亡くなり兄弟姉妹の相続となったケースでは全血の兄弟姉妹と半血の兄弟姉妹の法定相続分は異なりますので、混同しないように注意しましょう。

非嫡出子(婚外子)がいる

法律上の婚姻関係ある男女から生まれた子を嫡出子といいます。それに対して、法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子を非嫡出子(婚外子)といいます。婚外子が親の遺産を相続できるかどうかについては次のようになっています。

・母親の遺産相続できる
出産した事実から親子関係が証明され、母親の遺産を相続することができます。

・父親の遺産父親に認知されている場合は相続できる
父親の認知がなければ父親との法律上の親子関係は生ぜず、父親の遺産を相続することはできません。

法律の改正により、それまで婚外子の法定相続分は嫡出子の1/2だったものが、平成25年9月5日以降に開始した相続では、婚外子の法定相続分は嫡出子と同じになりました。婚外子の権利の不平等が改善された一方、それにより、嫡出子の法定相続分が少なくなるため、遺産分割が難しくなるデメリットも生じています。

また、認知の事実は、子を認知する旨の遺言書から知るケースと戸籍を集めていく過程で認知の記載のある戸籍から知る二つのケースがあります。遺言書から知る場合は、遺言書に記載されているので認知の事実を見落とすことは通常考えられませんが、戸籍から初めて子の認知の事実を知る場合には、戸籍を慎重に読む必要があります。認知は個人事項欄に記載されているため、古い戸籍では長い文章を読んでいかなければ見つけることができないからです。

認知した子を見落として遺産分割協議を行った場合、協議が無効となってしまうので十分に注意が必要です。

養子がいる

親と血縁関係のある子を実子といい、親との生物学上の血縁関係はありませんが法律上の血縁関係がある子を養子といいます。法律上、嫡出子としての身分をもち、実子とまったく違いがありません。養子は、養親と養子縁組を結ぶことで成立します。

相続では、普通養子縁組において、養子は実親と養親の両方について相続人となります。ただし、特別養子縁組では、実親との親子関係を消滅させるため、養親のみについて相続権をもつことになります。

養子縁組ついては、養親となる夫婦双方が子を養子した場合、夫婦の片方が子を養子にした場合、夫婦が夫婦を養子にした場合、夫婦の戸籍内の子が成年者を養子にした場合等様々なケースがあり、戸籍を読む際には専門性が求められることがあります。また、古い戸籍では、養子縁組がよく行われていますので、現行戸籍のルールとは異なる部分が多いので注意が必要です。

連れ子がいる

結婚相手の連れ子はそのままでは親子関係はありませんので、相手の親の相続人にはなれません。養子縁組が成立すると、子は筆頭者(通常は父親)の戸籍に入り、続柄に「養子」または「養女」と記載されます。相続が開始した段階では「養子」「養女」の記載を確認すれば、相続権があるかどうかは簡単に確認することができます。

参考として、まだ相続が開始しておらず、将来の相続を考えて結婚相手の親(義理の親)の相続人となるには、相手の親と養子縁組をして法律上の親子関係を結ぶ必要があります。共に子がいる男女が婚姻した場合には、夫は妻の子と、妻は夫の子とお互いに養子縁組をすることで義理の親の相続人になることができます。

以上のケースの場合には、相続について特別な規定が置かれています。これらのケースは、戸籍が集めにくかったり漏らしやすかったりしますので注意が必要です。また、相手とのかかわりには神経を使うケースがほとんどですので、遺産分割協議自体の準備に集中する必要があります。弊所では戸籍取得を一括代行することで、お客様の負担の軽減をすることができます。お気軽にお問い合わせください。