遺産分割の対象となる財産

相続財産の範囲

相続とは、相続開始の日(死亡日)から被相続人(故人)が所有していた財産及び一切の権利義務を受け継ぐことです。相続財産は、相続開始日にさかのぼって法定相続人に所有権が移行します。被相続人から相続人に引継がれる財産のことを「相続財産」といいます。

この相続財産には、現金、預貯金、土地や建物などの不動産、株式などの有価証券、自動車といったプラスの財産だけでなく、借金や未払金、損害賠償責任などのマイナスの財産も含まれます。

ただし、生活保護受給権や扶養請求権のように、その人だからこそ受けることのできた権利(一身専属権)や生命保険金や死亡退職金は相続財産にはなりません。

それから、家系図や過去帳の系譜、位牌や仏壇、神棚などの祭具、墓石や墓地などの墳墓は祭祀財産として相続財産とは区別されて、祭祀を主宰する者が承継します。

遺産分割の対象となる財産の範囲

相続には2つの大きな相続方法があります。その一つは、遺言による指定相続です。指定相続の場合には、生前遺言者が作成した遺言書の内容に従って遺産を分配していきます。他の一つは、遺言がない場合の相続方法で、法定相続と呼びます。法定相続では、相続人による話し合い(遺産分割協議)によって、遺産の分配の仕方を決めます。法定といっても法定相続分で分ける必要はなく、相続人全員の合意で自由に分けることができます。

法定相続において、遺産分割の対象となる財産は上記の相続財産の全てが対象となるわけではありません。相続財産であっても遺産分割の対象とならないものに次の2つがあります。

①賃金債権や損害賠償債権などの金銭債権
金銭債権は分けることが可能なため、遺産分割協議を経なくても相続開始と同時に、各法定相続人に対して法定相続分に応じて分割して承継されることになります。ただし、相続人全員の合意により、遺産分割の対象とすることは可能です。

②金銭債務
金銭債務は分けることが可能で、相続開始時において各相続人に対して法定相続分に応じて分割して承継されるため、遺産分割の対象とはなりません。これも金銭債権の場合と同様、相続人全員の合意により遺産分割の対象とすることは可能です。遺産の多くを取得する相続人が、債務も引き受けるという遺産分割の例は珍しくありません。

ただし、遺産分割協議によって決められた債務の承継割合は、相続人間の内部的な合意に過ぎないので、債権者に対しては主張することはできません。特定の相続人にのみ債務を承継させる場合には、相続人全員の合意に加えて、債権者との個別の同意が必要となるので注意が必要です。

遺産分割の対象となる財産

【遺産分割の対象となる財産】
・現金
・預貯金
・不動産(土地・建物)
・有価証券(株式・国債・社債・投資信託等)
・損害賠償請求権(交通事故・その他)
・動産(自動車・家財道具・貴金属・古美術品・絵画・骨董品等)
・借地権・借家権
・特許権・実用新案権・意匠権・商標権
・電話加入権
・ゴルフ会員権

 【遺産分割の対象とならない財産】
・債務
・死亡保険金
・遺族年金
・祭祀財産
・その他一身専属的な権利